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遠くの空に消えた・・・☆

遠くの空に消えた・・・☆_f0138409_1648116.jpg数日前に、この映画を見てきました。‘セカ中’の行定勲監督の作品なのですが、新聞や雑誌に載っていたノスタルジックでファンタジーな映画の雰囲気やストーリー解説にひかれて、少し前からチェックしていた作品です。
でもいざ映画館に入って見始めてからびっくり。ファンタジーというより‘フシギ・ワールド’に迷い込んだような感じだったので^^。
舞台となる馬酔村(まよいむら。文字通り「迷い」村?)は日本の中にありながら日本でないような、無国籍でどこか浮き世離れした独立共和国のような村。
超個性的な住民たちが日々喧噪を繰り返すその村は、空港建設推進の命を負っている父親と共にやって来た転校生の亮介に「東京よりもずっと面白い」と言わしめるほど。
でも、風変わりで一見現実の世の中とは一線を画しているように見えるその村も、‘術(すべ)’を見失った大人達は、どこか世紀末の世界に生きているかのように退廃的で暴力的で諦めていて弱っちい。そんな憎めないけど危うくて頼りない大人達を尻目に、子供達はどんなに傷ついてもぎりぎりまで自分と自分以外の人間と世界を信じることをやめない。その強さだけが村を救えるのだと無意識のうちに知っている。
そして最後に小さな奇跡が起きる・・・というストーリー。

記事の冒頭に載せているのはワタシが大好きなシーンで、ヒハルという少女が父親が残した天体望遠鏡で流れ星をつかまえようとしていて、その話を聞いた公平が自分もやってみたいと試しているシーンです。望遠鏡の下の部分にお皿のようなものがついていて、流れ星を見た瞬間にハンドルをぐるっと回すとそのお皿の上に星が落ちて来るという話を、公平は無邪気に本気にし、亮介は内心そんなことあるのだろうかと思いながら、ヒハルの父親に対する思いを感じ取り、一緒に星がつかまえられるように願います。
「蜂は航空力学的に言えば、飛べる構造じゃないらしいんだ。なのに、実際は飛んでるだろ。何故だと思う?蜂は飛ぼうと思ったから飛べたんだ。信じることで願いが叶う。人はそれを奇跡と呼ぶんだ。」
これは公平の父親の言葉で、この映画のキーワードにもなっている言葉なのですが、それを子供の目線から象徴したシーンであると同時に、3人の友情の絆が深まるきらきらした小さな宝物のようなシーンだと思いました。
この後、ある事件が起きて悲しみや絶望を知った小さな彼らが、星が落ちて来るように奇跡が起きるのを「待つ」のではなく、自分達で奇跡を「起こす」べく立ち上がるのですが、そこに続いていくまでのきっかけとなる大事なシーンでもあるのです。

結局最終的には昔のままの村の姿〜亮介や公平が満月のあの夜に奇跡を起こした広い広い麦畑も〜は守られ続けることはなかったけれど、目に見える自然豊かなこの村の風景だけではなく、まだ子供だったあの夏、一生懸命にみんなと力を合わせてこの村を守ろうとした、そのココロの中に奇跡はあったのだと思います。
風景は時を経て変わってしまっても、あの頃と同じかけがえのない仲間がいて、あの頃の気持ちに戻れる大事な思い出がある限り、馬酔村はココロの中で永遠に存在し続ける。あの夜彼らが本当に守りたかったのは、守ろうとしたのはもしかしたらこの変わらないココロだったのかも知れません。滑走路がつくられても消えることがなかったあの夜の公平の小さな靴跡のように。
ラスト、大人になった亮介が馬酔村(馬酔村があった場所?)に再び帰ってきて、降り立った飛行場で「(空港建設に反対していた自分が)飛行機に乗ってここに帰ってくるなんて皮肉だ」と言って苦笑いする場面があるのですが、飛行機に乗って帰ってきた亮介をやはり大人になった公平とヒハルが変わらない笑顔で出迎えるこのシーンが、だからワタシはとても好きなのです。
そしてこのシーンは、村人の意思を顧みることなく空港建設を強引に押し進めようとする亮介の父親(実は彼が本当は誰よりも‘子供’のままであり続けたいと願いながら‘子供’のままではいられなかった悲しい過去を背負った人間であることもわかってきます)を、立場や考えの違いを超えて迎えた公平の父親とバー「花園」のママ、3人の温かい関係性をどこか彷佛とさせます。

(大人達の中にも‘子供’であり続けている人間(死んだ弟の帰りを待ち続ける精神薄弱気味の青年、赤星や、人力飛行機の翼を持つ幻想的な登場人物スミス提督)や、‘子供’であり続けることの素晴らしさと難しさ(身勝手さ)を知っている公平の父親のような人間、決して‘子供’ではないけれど、母親の温かいまなざしでみんなを見守るバーのママや公平の母親などがいて、そして、弱っちく滑稽に描かれているその他大勢の大人達もどこか根っからは憎めない。決して「子供=強い=善」「大人=弱い=悪」という単純な図式だけになっていないところも、リアルでありながら懐の深い優しさが感じられて、イイなあと思いました。)

ミニシアター系のアートな映画を見慣れていないと、ん???と思えるような演出も多々あり、好き嫌いが分かれる映画だと思いますが(映画全体の雰囲気的には「蒲田行進曲」と「ぼくらの七日間戦争」と「E.T」などの感動ファンタジー映画とコメディタッチのVシネマを足して4で割ったような、フシギな雰囲気です^^過去のいろいろな映画を連想させるシーンも時々出て来ます)、大事な部分はストレートに描かれているので、素直にココロに伝わって来ます。
いい映画だと思いますが、もしかしたら、もっとわかりやすくメッセージを伝えようとするなら、アート性を薄くしてもう少し素朴な演出にしても良かったのかも知れません。


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by manasavvy | 2007-08-25 18:08 | ・映画・DVD・アニメ・TV番組


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